事業の概要

>>調査研究事業  >>情報の提供事業  >>研修会・講習会等事業  >>普及・啓発事業  >>その他支援事業

調査研究事業

 毎年度、学識経験者、国・地方公共団体の財政担当者及び銀行・証券会社等の実務者からなる「地方債に関する調査研究委員会」を設置し、地方債の発行、消化、流通、償還等の地方債資金の円滑な調達に関する重要事項について、その時々の課題をテーマとして専門的な調査研究を行い、政策の提言等をしております。
年 度 調査研究テーマ・内容
令和6年度
<わが国における金融環境の変化と地方債の個人消化円滑化に向けた展望>

 日本銀行がマイナス金利などの金融政策の枠組みの見直し実施したことに加え、底堅い米国経済に伴う円安基調での推移や、輸入物価を起点とする物価上昇圧力などの物価の上振れリスクへの懸念から、早期の追加利上げへの思惑により金利が上昇しています。
 このように金融環境が変化するなか、国・地方団体における個人投資家を対象とする債券発行に目を向けると、個人向け国債は2003年に「変動10年」の発行が開始され、2005年発行の第10回債ではペイオフの完全解禁も重なったことで2兆円超が発行されました。以降、「固定5年」や「固定3年」といった新しい発行年限を導入しつつ四半期毎の発行から毎月発行への変更を行い、金融機関も独自の販売促進施策を行うなど個人投資家の保有促進が図られており、足許では月間平均3,000億円程度が安定的に消化されました。
 住民参加型市場公募地方債は超低金利環境による需要減退から発行が控えられてきたが、金利上昇を契機として2023年度に共同発行形式での発行が6年ぶりにみられたほか、発行を継続している地方団体では、注目度の高いSDGs債を個人向けとして発行する事例や自然災害からの復興など国民の耳目を集める目的に着目して個人消化を促す事例もみられました。また従来とは異なる発行手法として、ネット証券を通じ、若年層にもアプローチするとともに、自治体単位の地理的制限を設けることなく全国の個人投資家需要に応える試みを実践する地方団体も見受けられます。こうした地方債の個人消化の円滑化に資する取り組みは、政府による「貯蓄から投資へ」の方針や新NISA制度の浸透のみならず、金利上昇を背景に有価証券投資に対する個人投資家の関心が高まりつつある環境下において再び活発化することが見込まれております。
 令和6年度の調査研究委員会では、まず、金利上昇や政府の「資産所得倍増プラン」を踏まえた個人投資家の有価証券投資行動の変化について金融機関等の調査を参考にしつつ分析を行い、地方団体における個人投資家を対象とする地方債の発行ニーズや実務上の課題を調査しました。また、引受金融機関が抱えるリスクや実務上の課題も調査・分析しつつ、オンライン販売等の新たな取り組みについても考察し、地方債の個人消化の円滑化に資する商品性、販売方法等の構築に向けた提言を行いました。

令和5年度
<地方債市場におけるESG投資、デジタル証券化等の環境変化への対応>

 SDGs債や脱炭素への関心は、2006年の責任投資原則において、投資意思決定プロセスの観点の一つとしてESGが組み込まれたことを契機に、急速に拡大しています。グリーンボンド原則等のガイドラインも整備され、国際金融機関が中心であったグリーンボンドの発行体は、政府や一般企業、金融機関にも裾野を広げ、本邦の地方団体においても、2017年の東京都によるグリーンボンド起債を契機として、グリーンボンドを中心にSDGs債の起債が大きく増加しています。
 他方、デジタル技術の進展に加え、新型コロナウイルス感染症の影響により、デジタル化についても加速度的に進んでいます。とりわけ金融市場では、分散型台帳技術を基盤とした有価証券の性質を持つ電子的なトークン(セキュリティトークン)による、新たな資金調達の試みが事業会社において先行して行われており、将来的に地方債市場へ波及してくることが推測されます。
 このような急速な環境変化の中でも、地方団体は安定した財源確保へ向けた主体性が求められることから、資金調達や起債運営等に関して普段から様々な検討を行っておくことが重要であると考えられます。こうした考えのもと、本年度の調査研究委員会では、足許の地方債市場を取り巻く環境の変化について調査を行いました。特に「グリーンウォッシュ」を懸念した規制・ルール強化の動向や、グリーン以外のラベル債、グリーンローン等の広がりについて調査・分析を行いました。また、デジタル証券形式での地方債の起債の可能性について関係法令の改正や地方団体の起債体制、投資家ニーズ等の調査・検討を行いつつ、金利水準が上昇した場合や、デジタル化が波及した際に「小口化」ニーズに対応した資金調達手法として想定される住民参加型市場公募地方債についても調査・分析や検討し、地方団体の起債運営上の実務的な課題等を整理のうえ、提言等を行いました。

令和4年度
<市場環境の変化局面が投資家に与える影響と投資ニーズを捉えた地方債による安定的な資金調達の検討>

 コロナ禍からの経済正常化やロシアのウクライナ侵略による地政学的リスクの高まりを背景とした供給制約、賃金上昇、資源価格高騰などから、欧米主要国を中心にインフレ基調が急速に高まっており、欧米各国の中央銀行は金融政策を転換し、金融引締めに動いています。一方で、日本銀行は、安定的・持続的な形での物価安定目標の実現を目指し、イールドカーブ・コントロール(YCC)を柱とした緩和的な金融政策を維持しています。こうした中、我が国の地方債市場をみると、総じて底堅い投資家需要に支えられているものの、上昇基調にある海外金利の見通しや国内の金融政策変更への思惑の高まりなどによって不透明さを増す金利環境が嫌気され、市場の地合いは悪化してきており、一部の投資家においては債券投資に慎重な姿勢がうかがわれます。
 このように金融市場における変化が地方債市場に波及しつつある状況において、将来想定しうる市場環境変化を見据え、足許から将来にかけての投資家動向を調査し、必要に応じて調達計画や発行手法の見直しを検討することは、今後の金利環境変化時の備えとなることに加え、地方団体の主要な資金調達手段のひとつである地方債を安定的に調達していくために重要な取組みであると考えられます。
 令和4年度の調査研究委員会では、先行き不透明感が高まる局面で、現在および将来の投資家の動向にどのような変化が生じ、地方債市場がどのような対応を求められるのか等を調査・分析しました。そのうえで、想定される金利シナリオの分析も行いつつ、投資家動向の変化を地方団体がどのように受け止め、どのように起債運営に反映させていくべきかについても調査を行うとともに、今後の金利環境の変化を見据え、地方債の安定的な消化に向け地方団体が対応すべき事柄・留意点についてとりまとめを行い、所要の提言を行いました。

令和3年度
<地方債市場の環境変化の点検と発展に向けた検討〜個別発行と共同発行の比較を踏まえて〜>

 地方団体の主要な財源調達手段の1つである地方債は、良好な環境での発行が続いています。我が国の金融市場は、2020年入り後の新型コロナウイルス感染症の拡大を受けた、政府や日本銀行による財政政策・金融政策等を背景に、安定した状況が続いており、こうした中、我が国の地方債市場をみると、底堅い投資家需要に支えられ、地方団体は安定して低利での資金調達を継続しています。
 このように良好な発行環境が継続している状況にあるとはいえ、市場全体をとりまく環境変化の点検、分析を踏まえ、必要に応じて発行手法等の見直しを検討することは、地方債市場全体の発展を促す観点から重要な取組であると考えます。
 こうした考えのもと、令和3年度の調査研究委員会では、都道府県・政令指定都市と金融機関を対象にアンケート調査を行い、いわゆるウィズコロナにおける金融経済環境において、地方債の良好な発行環境を支えている要因の変化を想定した場合の調達のあり方(調達年限、発行方式など)にかかる検討を行いました。また、一般債市場全体として発行量が増加基調にあるSDGs債や外債について、地方債で発行する場合のメリット・デメリット等を整理しつつ、個別発行の場合と共同発行の場合とで比較を行い、今後の地方債市場の発展に向けた所要の提言を行いました。

令和2年度
<新型コロナウイルス感染症拡大の影響を踏まえた地方公共団体の資金調達方法と調達環境の整備について>

 新型コロナウイルス感染症が世界的に拡大し、各国の金融市場は一時的に大きな変動に見舞われましたが、足もとでは各国政府や中央銀行による大規模な財政政策・金融政策により、全体として落ち着きを取り戻しています。こうした中、わが国の地方債市場をみると、総じて底堅い投資家需要に支えられ、地方公共団体は安定して低利な資金調達を継続しています。
 もっとも、地方公共団体は新型コロナウイルス感染症拡大への対応及びその影響による税収減等によって、追加的な資金調達が必要であり、その際、どのような資金調達(個別債、共同発行債、銀行等引受債等)を行ったのか、引受金融機関の引受スタンスや投資家の投資スタンスを踏まえて調査・分析することは意義があると考えられます。
 今後の感染症拡大の状況や大規模自然災害の発生等によっては、資金調達が困難化する事態も想定され得るため、今般の感染症拡大の影響を受けて、地方公共団体の資金調達の軸足や力点にどのような変化が生まれているのかを分析すること、危機時における資金調達手法の調査・分析を通して地方債の商品性の多様化に繋げること、2019年度に地方債の対象が拡充された日本銀行適格担保制度の活用状況や課題について検討を行い更なる活用を図ること、に重点を置く意義は大きいものと考えられます。
 令和2年度の調査研究委員会では、都道府県・政令指定都市を対象に、新型コロナウイルス感染症拡大の影響による資金調達計画の変更やそれに伴う金融機関等とのコミュニケーション等に関してアンケート調査を実施するとともに、地方公共団体や金融機関、証券会社へ商品性の多様化の状況やコミュニケーションの変化等をヒアリングし、実態把握と課題を整理のうえ、所要の提言を行いました。

令和元年度
<地方債市場を巡る環境変化と安定的・効率的な資金調達の実現に向けて〜銀行等引受債による調達を中心に〜>

 日本銀行の金融緩和政策により、金融市場では低位な金利水準が暫く継続しており、先行きも当面、低金利環境の継続が見込まれる中、地方公共団体は資金調達コストの面で低金利環境を享受する一方、投資家・金融機関等は資金利鞘・運用収益の減少により、厳しい収益環境に置かれております。
 こうした環境を踏まえると、低金利環境が金融機関の投融資スタンス等に与える影響を継続的に調査・分析し、地方公共団体による安定的かつ効率的な資金調達の継続に向けたより適切な地方債の商品性や調達手法の組合せ等に関する課題について整理することは重要です。
 特に銀行等引受債は、地方公共団体の重要な調達源ですが、主な担い手の地域金融機関では、低金利環境の長期化や金融当局の動向等を踏まえ持続可能なビジネスモデルの再構築を展望する中で、引受スタンス等が変化している可能性があります。
 令和元年度の調査研究委員会では、地域の経済・金融環境や地方公共団体の調達構造等の特性も踏まえつつ、昨年度に続き、アンケート調査、地域金融機関による引受状況等の実地調査を実施のうえ、団体の調達方針・方式、金融機関の引受スタンス等の実態・課題を整理し、所要の提言を行いました。

情報の提供事業

 「地方債」は隔月で発行し、地方公共団体、金融機関及び証券会社等の会員相互間並びに国その他関係団体との交流の場としてご利用いただくため、会員及び関係機関等に広く無料で配布しています。掲載する内容は、最新の「地方債に関する論文」、「地方債計画・地方財政計画・財政投融資計画等の解説」、「地方財政講座・金融講座」等を中心に、タイムリーな金融、公社債関連情報、地域経済の状況等となっております。また、地域の活性化に取り組んでいる関係者の報告、郷土の名産、歴史等も紹介し、さらに、その他資料として、都道府県及び政令指定都市が発行する地方債の月別銘柄一覧、団体別発行額等の詳細について掲載しております。

 地方債協会では、地方公共団体において、金融・経済環境の変化への対応が従前にも増して求められる状況となっていることを踏まえ、地方債制度、金融・経済の動向等に関する内容を中心とした市町村にとって参考となる情報を提供する「季刊 市町村への地方債情報」を年4回刊行し、全国の市町村に無料で配布しております。

その他刊行物の発行

地方債協会は、地方債発行側の地方公共団体と、引受側の銀行・証券会社等にとって必要な情報をそれぞれに提供し、あるいは相互の情報の交換を仲立ちすることによって、地方債の安定した発行と円滑な消化の促進に資することとし、次のような刊行物を会員及び関係機関等に広く無料で配布しております。

この年報は、地方公共団体が毎年度総務省に提供しているデータの提供を受けて作成しており、主な内容は以下の通りです。

○地方債発行(予定)額の状況 ○地方債資金の借入・発行状況 ○地方債現在高の状況

○地方債関連経済統計 ○金融・公社債情報 ○地方公共団体の財政状況等

当協会におきましては、地方公共団体が証券で発行する地方債の発行要項等をマイクロフィルム・CD-ROMに収録・保存しておりますが、会員の皆様の検索の利便を図るため、発行銘柄・発行価格・表面利率・償還期限・発行日・発行額とそれらのフィルムナンバー・CD-ROMナンバーを記載した、「地方債便覧」を発行しております。

地方債情報の速報

 地方債協会では、都道府県、政令指定都市から提供いただいたデータをもとに、次の情報を速報として、毎月会員に無料で提供(メールで)しております。

○地方債月別発行銘柄・証券コード一覧

○地方債資金別発行状況

○銀行等引受地方債の発行・借入の状況

○市場公募・銀行等引受地方債の発行・償還・現在高の状況

○一時借入金の状況

○その他の関連情報

地方債関連情報のネットワークサービス

次の情報を地方債協会のホームページに掲載し、会員に提供しております。

@当協会の事業概要(調査研究事業結果の主要概要、研修会・講演会のお知らせ、刊行物の案内など)

A市場公募地方債の発行条件及び発行団体並びに地方債銘柄・発行額・残高・発行予定額

B都道府県、政令指定都市の財政状況

C地方公共団体向け金融関連情報

※以上の他、地方公共団体に向けて、地方債による資金調達や公金の管理・運用等に有効となる債券市場の動向等を、投資家に向けて、地方債の発行銘柄(予定含む。)や地方公共団体の財政状況等の情報を掲載しております。

市場公募地方債の発行条件の情報等をメールにより即時会員等に配信しております。

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研修会・講習会等事業

 毎年度の地方債の同意等基準や事務手続き等のほか、地方債に関連する諸問題についての周知を図るため、総務省の協力を得て、毎年春に全国7ブロックで講習会を開催しております。

 都道府県、政令指定都市等の担当者を対象に、金融機関等の協力を得て全国型市場公募地方債の発行実務に関する研修会を、毎年7月に東京で2日間の日程で開催しております。

 「資金調達の多様化」の手法として、平成13年度以降、各地方公共団体での取組みが活発化している住民参加型市場公募地方債の発行支援並びに発行事例を紹介する場として、総務省との共催により、研修会を開催しております。
 毎年8月に東京会場、9月に兵庫会場で開催し、発行団体による体験談等の報告も行っています。

 地方公共団体の地方債実務担当者及び銀行・証券会社等の公共債担当者を対象に、地方債に係る当面の問題点、実務上の取扱及び金融経済情勢等についての知識を習得するため、毎年秋に全国7ブロックで研修会を開催しております。

地方行財政及び金融経済の当面する諸問題と今後の課題等をテーマに、総務省、日本銀行の幹部を講師に招き、地方公共団体及び金融機関等の幹部職員を対象に、毎年全国2カ所で講演会を開催しております。

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普及・啓発事業

 地方債を含めた地方財政制度の概要についてわかりやすく解説し、各国関係者との相互理解に資するため、英文による小冊子等を作成しています。地方債の概要を簡単にまとめた英文パンフレット「Local BondSystem in Japan」及び地方債協会の業務を紹介した「About Local Government Bond Association」は、会員をはじめ、外国からの視察関係者、在日外国金融機関等に無料で配布しております。

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その他支援事業

一般債振替制度に係る事業

地方債協会では、平成18年1月から開始した一般債振替制度の円滑な運営を図るという観点から、都道府県・政令指定都市・市区町村・一部事務組合への新証券コードの付番等に関する事務を行ってきましたが、今日までの制度の定着度等を勘案し、関係者とも協議のうえ、平成26年6月より、地方債も他の事業債と同様の手続きとすることといたしました。したがって今後の関係手続きはすべてほふりに対して申請等を行うこととなります。<詳細はこちら  市場公募地方債の発行・流通等の諸問題についての情報の交換及び提供を行う場として、市場公募地方債を発行する56の地方公共団体(令和2年4月現在)で構成される連絡協議会を設け、例年7月に協議会を開催しております。  共同発行市場公募地方債の発行・流通等の諸問題についての情報の交換及び提供を行う場として、市場公募地方債を共同で発行する37の地方公共団体(令和7年4月現在)で構成される連絡協議会を設け、例年3月に協議会を開催しております。  グリーン共同発行市場公募地方債の発行に際して必要な事項等を協議する場として、グリーンボンドを共同発行する44の地方公共団体(令和7年3月現在)で構成される連絡協議会を設け、年4回程度開催しております。  地方債を発行している地方公共団体にとって、投資家向け広報(IR)の重要性・必要性が高まっています。このため、全国型市場公募地方債を発行する地方公共団体が、一同に集まりIR活動を行う場としての合同IRを実施するとともに、地方公共団体等が行うIR活動についての支援も行っております。

勉強会・研修会への講師派遣

地方公共団体、金融機関・証券会社及び投資家等の要請により、地方債に係る実務上の取扱及び金融経済等についての勉強会・研修会への講師派遣を行っております。

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これらの事業は、会員会費のほか、日本財団及び(一財)全国市町村振興協会からの助成金等の交付を受けて、実施しています。